埼玉の伝統的野菜「くわい」
埼玉県農林総合研究センター 園芸研究所 露地野菜担当
クワイは、単子葉植物のオモダカ科オモダカ属で、多年生の水生植物である。草丈は、110~125cmあり、葉は緑色で欠刻のない矢形で長さ約30cm、内部は海綿状の組織からなる。地下の塊茎部分が食用に利用される。
アジアをはじめ、ヨーロッパ・アメリカの温帯から熱帯に広く分布し、日本では、埼玉県(さいたま市・越谷市・草加市)と、広島県(福山市)が主な産地である。日本へは、平安初期に中国から伝来し、食用に普及したのは、江戸時代になってからと言われている。
埼玉県の栽培用品種は、塊茎の皮色が青藍色の「京クワイ」である。
栽培は、6月下旬~7月上旬に水稲と同様に代掻きをした水田に、畝間80~90cm、株間15~25cmで植え付ける。芽の先が地表に出るか出ないかぐらいの浅植えにし、4,500~8,500球を植え付ける。
京浜市場は大玉、関西市場は小玉が好まれるため、仕向先によって栽植密度を変える。
生育は、10月上旬頃まで葉数の増加を伴って旺盛に生育するが、塊茎の肥大は、9月上旬頃から11月中旬頃まで肥大する。1株に30個前後着生する。
収穫は、需要の最も多い正月にあわせ、11月下旬から行われる。収穫作業は、縁起物として重要な芽をかかないように丁寧に行われる。
有効成分は、炭水化物が中心で、カリウムを多く含み、血圧の上昇を抑える働きがある。
食べ方は、芽が出ていることから、縁起の良い物として、煮物で祝いの膳やお節料理として食べられる習慣がある。
縁起物以外の簡単な食べ方として産地では、(1)薄くスライスして揚げ物(クワイチップス)にする。(2)小さなものを丸ごと素揚げにする。(3)丸ごと炭火等で素焼きにする等工夫している。
給食会報159号(平成25年1月)から