八つ頭
埼玉県農林総合研究センター 園芸研究所 露地野菜担当
八つ頭は、分類上里芋の一種で、お正月の僅かな時期にしか出回らない、より旬を感じさせる数少ない芋です。
原産地は、里芋がインドから東南アジアにかけてと言われていますが、里芋から分化した八つ頭は、500年代に中国で記された、世界的に最も古い農業専門書「斉民要術」に記載があることから、日本へは中国を経由して、平安時代には伝来していたのではと考えられています。
本県における主な産地は、さいたま市の芝川沿いの見沼周辺地域です。
芋の形状は、里芋と異なり、子芋が親芋から離れずに育つため、ゴツゴツした形になります。食味は、ほくほくとし、蔗糖を含むため甘みがあります。
旬の時期は、12月~1月です。
八つ頭は、八が末広がり、頭が人の頭になる。また、子芋がたくさん付くことから子孫繁栄でめでたい等の理由から、正月の料理に多く使われ、出荷時期が限られています。
栽培は、里芋同様四月に畝間約100cm・株間約35cm・深さ約10cmに定植し、マルチで被覆し、6月下旬にマルチを剥ぎ、追肥と土寄せを行い、病害虫防除と灌水を行い、11月から収穫になります。生育期は水を欲しがりますから、灌水が最も重要な管理作業になります。
料理は、一般的に肥大する親と子芋は煮物です。種芋になる孫芋は、「八っ子」といわれ、茹でて塩・醤油・味噌等好みの調味料をつけて食べると、芋本来の味が楽しめ美味しくいただけます。更に葉柄部分は「ずいき」と言われ、皮を剥き乾燥させ、煮て味を付けて食べられます。
丸系八つ頭
最近のおせち料理には、調理に手間がかかるためか、八つ頭の入っているものが少ないように思います。当研究所では、調理に手間がかからない、丸い八つ頭を選抜育種し、県内数カ所で生産と販売が始まりました。
里芋とは違う食感が楽しめる八つ頭を、正月料理に一品加えてみてはどうでしょうか。
給食会報162号(平成26年1月)から